インドでは華陽夫人となった玉藻前。「うしおととら」のとらのモデルは斑足太子?!ーインド華陽夫人編ー

インドでは華陽夫人となった玉藻前。「うしおととら」のとらのモデルは斑足太子?!ーインド華陽夫人編ー

前回は玉藻前の古代中国殷王朝の「妲己」のお話をしてきましたが、今回は玉藻前のインド編として、インドでの玉藻前はどんな人に化けてどのような人生を送っていたのか?!をお話したいと思います!

そして、漫画「うしおととら」とも関係があるので一緒にご紹介します!

では、玉藻前インド編~~♪今回も「絵本三国妖婦伝」より。

玉藻前ーインド・華陽夫人編ー

芳年「和漢百物語」

太公望に主体を見破られた九尾の狐は命からがら天竺、現在のインドに逃げます。当時インドは中天竺、東天竺、西天竺、南天竺、北天竺と5つに分かれていて、この伝説は南天竺でのお話です。

九尾の狐が妲己として退治されてから、約700年後。マウリヤ王朝の時代、紀元前322~185年頃に栄えた南天竺のマガダ国と言う国があり、九尾の狐はそのマガダ国の王子、班足太子(はんぞくたいし)に目を付けました。

太子の父、屯天沙朗(じゅんてんしゃら)は正しい政治を行い、万民を慈しみ大事にしていた王でした。息子の太子もまた、父に似て聡明英智であり、民衆に対して慈愛に溢れた人物に成長していたため、王自身も息子に政治を委ねようと決め吉日を選んで就任式を行うことに決まりました。

そんな秋も終わりに近づいたある日の事、太子が楼閣に上って紅葉の景色を眺めながら笛を吹いていると、遠くの方からその笛の音に合わせるかのような美しい歌声が聞こえてきました。

その美しい声が気になった太子は「どんな女性なのだろうか?」と部下に、声を頼りに森の方へ探しに行けと命じました。

そして、部下が探しに行くと森に一人の女性がいたので、太子の元へと連れていきました。

女の顔を見ると、その美しさは例えようがないほど麗しく、その装いは天女が降りて来たか、菩薩が姿を現したかと思うほどだったのです。

太子は見とれて「そなたの姿はインドのものではないな。どこの国の者なのだ?」と問うと、

女は「私は殷の紂王の後宮に仕えていましたが、周の武王が攻めてきて殷は滅ぼされてしまいました。紂王は身投げして死に、私も捕らえられて殺させるところをこの国まで逃げてきたのです」と涙ながらに経緯を話したのです。

そんな憐れな姿を見た太子は「今日から私のそばで侍女として仕えよ。心を楽にして勤めなさい」と言うと、女は飛び上がって喜び「この御恩は生涯忘れることはありません」と9回拝しました。

こうして、太子に取り入ることが出来た九尾の狐。ちょろいちょろい!(ニヤリ)と思ったに違いありません!(笑)

その晩、太子はさっそく宴会を行い、女は得意な歌を披露して太子を喜ばせ、自ら酌をして酒をガンガン飲ませたあと、夜も更けた頃に太子の寝床に忍び込むのでした・・・。

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こうして女は妃華陽夫人(かようふじん)となります。

太子の寵愛は日に日に増して行き、夫人の言葉を何でも聞くようになっていました。偉大なる父の命にも背くようになっていて、千人の首を刎ねるように命じたり、紂王の時のように昼夜乱痴気騒ぎをして、酒池肉林に浸り、非道の限りを尽くしていた頃、ある事件が起きます。

ある日、庭ですやすやと眠っていた狐を矢で撃てと部下に命じた太子、その矢は狐の頭をかすりびっくりした狐は逃げてしまいました。「あの狐を妃に見せたら喜んだだろうな~ぁ。残念だったな~ぁ」とがっかりした太子が夜寝室に向かうと、そこには頭に包帯をまいた華陽夫人が寝込んでいました。

太子が「どうしたのだ?!」と尋ねると、華陽夫人は「故郷を思い出して懐かしんでいたところ、夢で周の武王が私の額を撃って、ビックリして目が覚めると本当におでこに傷があったので布を巻きました」と言い泣きながら太子にすがりました。

この事件がきっかけで正体を現すか?!と思いきや、やはり一筋縄ではいかない九尾の狐。

むしろこれを利用してもっと寵愛されるようになった華陽夫人の要求は日増しにエスカレートしていきました。

そして、太子の側近や大臣の怒りは爆発寸前にまで達し、もやは太子に味方をする者が誰一人いなくなりました。その非難はやはり華陽夫人に及び、これをきっかけに夫人は日に日に憔悴し弱っていくのでした。



釈迦の弟子、名医の耆婆登場

そんな夫人を心配した太子が釈迦の弟子で稀代の名医、耆婆(ぎば)に診せたところ、脈が人間のものではなく‘‘野狐”のものだと一発で見抜いた流石の名医。これは太子が危ない!と思った耆婆は太子に「この脈は人間のものではなく、野狐のもの。早く御身から遠ざけて下さい」と告げますが、「そんなでたらめあるものか!」と一喝されてしまいます。

当たり前ですよね・・・・。そんなこと言ったって誰も信じないって感じですが、耆婆は動じず、自分の見解の証明をすべく太子に頼み込み、夫人との医療論について口喧嘩で勝敗を決めたいと提案します。

が、口喧嘩の場で「お前は私を女だと思ってバカにして恥をかかせようとしている。お前より詳しく説明してやろう」と残念なことに夫人に上手く言いくるめられ負けてしまったのです。こうして城を出禁になった耆婆。



薬王樹を得る

逆に恥をかかされてしまった耆婆でしたが、「これは一瞬の傷だ。華陽を除くのは国のため、君主のため、天の助けを借りて忠義を果たそう」と17日間昼夜寝ずに一心不乱になって念仏を唱え続けるのです。

そんな日が続いたある夜の事、疲れて思わず寝そうになっていた時、夢ともうつつともつかないお告げを受けます。

「そなたが、国のために化生(華陽夫人)を除こうと願うのであれば、金鳳山と言う山を登り薬王樹を探しなさい。この樹を倒し、野狐樹としなさい。これを化生に見せたら、たちまち姿を現し逃げ去るだろう」

この夢を見た耆婆は「神の教えに従い金鳳山に向かおう!」と山へ行く前に、ある人の元へ向かいます。城の中で耆婆の理解者であった孫妟(そんあん)と言う大臣です。

耆婆は出禁になる前に、包み隠さず話そうと「華陽夫人は妖婦であり、人間ではない」と伝え、孫妟もまた「事の一部始終を告げられることの嬉しさよ」と信じてくれた人でした。

耆婆は金鳳山に登る前に、孫妟に夢のお告げの話をし、また、耆婆は謹慎中でもあったので山に登ることの了承を得に行ったのです。これにも理解してくれた孫妟に「必ず薬王樹を手に入れて戻ってる!」と誓った耆婆なのです。

ですが、いざ山に着いてみるとそこには沢山の木があるのでどれが薬王樹か分からない。頭を抱え困っていると、一人の木こりがやってきて斧で大樹の枝を打っている。

その姿に「天のお導きだ!」と思った耆婆は木こりに「薬王樹と言う気を探していますが、知っていますか?」と問うと木こりは「俺が今切っているのが薬王樹だよ」と答えるではありませんか!

耆婆は「どうか一本私に下さい!」と頼み込むと、快く分けてくれた木こり。こうして、薬王樹を手に入れて耆婆は木こりにお礼をしたいが、分けるものがないと申し訳なく思っていると、木こりが「一緒にお酒を飲もう!」と誘ってきたので、一緒に飲むことに。薬王樹を手に入れた嬉しさからか、その酒の味の甘美たること例えようがない。

いつの間に寝てしまったのか、目覚めてみるとそこは野原で、木こりの姿はもうなくなっていました。

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あの木こりは神の使いだったのでしょうか・・・。

帰った耆婆は薬王樹をちょうどいい長さに切って大事に箱にしまうと、さっそく孫妟の元へ持っていきました。

「夢のお告げは本当だったのだ!」と話すと、孫妟も喜んでくれて華陽夫人を追い出す作戦を練り実行しました。

それは、孫妟が「耆婆が神に祈った結果、夢のお告げで一本の樹を化生に見せるとたちまち姿を現すと、神勅がありました。願わくばその一物を華陽夫人に見せて、太子にも本当の姿を見ていただき、耆婆の疑いも晴れるでしょう」ともうハッキリと太子に訴え出たのです。

それを聞いた太子は「耆婆の妄言は治っていなかったのだな。どんなに願っても聞き入れない」と言ったのですが、他の大臣も応戦して説得すると、「そこまでお前たちが言うのであればいいだろう」と耆婆を城へ連れてくることが決まりました!

これに、当の本人である華陽夫人は「なんと言う身の程知らずなんでしょう~今日こそ耆婆が処刑されることでしょう~」と自信満々な夫人は笑いながら喜んで待っていたのです。



華陽夫人、正体を現す

歌川国芳/三国妖狐図会

使者からの知らせを受け取った耆婆はすぐさま飛び立ち、太子の元に赴きました。

それを見た華陽夫人は「よくも出向けたものだな。恥知らずが」と言ってあざ笑うと、耆婆は「何を言っているのですか!ただ一目ご覧いただきたいものがあって参上しただけのこと。よければ差し出しましょう」と言って、夫人の前に出ると華陽夫人の眼前に薬王樹を取り出しました。

その瞬間なんと、華陽夫人は身を震わせて叫び出し、容姿端麗だった姿はみるみるうちに九尾の狐になっていったのです。

そして、「もう53日遅ければ太子も殺せたのに残念この上ない」と言って突然鳴った稲妻と共に何処かへ消えて行きました。

その姿に太子はじめ大臣たちも恐れ慄き、「不思議だ。怪しい化生の害を逃れたのは世にも珍しい。顔は白く、全身金毛で尾が9つあるのはいかにも年を経た悪狐であろう」と舌を巻いた。

太子は酔いが覚めたかのように夢見心地でありましたが、ことの次第を悟り「これまで華陽の色香の迷い心を奪われていたのは大変愚かであった」と大臣と部下らに懺悔し、「耆婆がいなかったら、国を失い黄泉の鬼になっていただろう」と感激し、耆婆に医者復帰と教道一階の官位を与えました。

その後、太子は妖怪の怨みを恐れて華陽夫人と出会った紅葉の茂みに塚を建て、これを塚の神としました。

めでたし。めでたし。

と言う、玉藻前インド編をお話しましたが、実は、華陽夫人の正体である九尾の狐は上記でもあるように、「顔が白く、金色の毛」を纏っていることから、「白面金毛九尾の狐」と呼ばれています。

この「白面」と言えば、‘‘うしおととら”の白面の者ですよね!



うしおととらと白面金毛九尾の狐

藤田和日朗/うしおととら 完全版17巻/小学館

藤田和日朗先生の「うしおととら」は主人公の潮が妖怪の「とら」と共に妖怪退治の槍「獣の槍」を使って最強最悪の妖怪「白面の者」と戦う物語ですが、この「白面の者」と言うのは、これまでお話してきた九尾の狐である、「白面金毛九尾の狐」がモデルになっています。

白面の者は、世界が陰と陽のエネルギーに分かれた時に‘‘陰”の気から生まれた邪悪の化身で、陽の気から生まれたあらゆるものを憎み、破壊することを喜びとしています。

長年、人間の陰の気を吸ってきた事によって九尾の狐として実体化し、より力が増して強力な悪狐(あっこ)となりました。

このように白面の者は、世界の始まりと共に生まれたとなっていますが、実は、白面の者のモデルとなっている、白面金毛九尾の狐も同じく世界の始まりと共に生まれていたんです!



白面金毛九尾の狐の誕生の秘密

実は、玉藻前が殺生石になって玄翁和尚が殺生石を砕こうとした時に、玉藻前が小さな女の子となって姿を現して、玄翁に自分がどうやってこの世界に誕生したのかを語っていました。

それによると、玄翁が殺生石の前へ出て、「執念に満ちた魂の帰る場所はない。今すぐにお前の心の底を示しなさい。」と言う意味のお経を唱えると、石が微かに震えだし、16歳ほどの石の精が姿を現した。

それは、朝廷で玉藻前として過ごした一番良い思い出の詰まった年齢の姿だったのです。

そして、玄翁は玉藻前に「人の獣もみな宇宙の塵にすぎない。この真理を時を超越して悟らなければ、お前の本性はどこにもないだろ。真の悟りは磨いてもすり減ることはない。」と言う経を読み諭します。

この言葉は良い言葉ですね!私は感動しました。と、言うのもこの言葉の意味は、今で言う「ワンネスと言う宇宙意識に目覚めて。自分の本体。ハイヤーセルフと一体になりなさい。自分の本体であるハイヤーセルフは減ることはないのだから」と言う意味です。

その言葉に玉藻前は自分の出生の話を語り始めます。「私は今まで生まれ変わっては三千世界を魔界にしようとしてきたが、今の玄翁の言葉で、得脱(悟りを開いてた)した。
私は元より人間ではない。天地開闢(世界の始まり)時に、陰気が凝り固まったものが、狐の形を成したものなのだ。数千万の時を経て、白面金毛九尾の狐となり、中国・インド・中国・日本と経て、たまたま玉藻前に化け、鳥羽上皇に近づいたが、最終的に捕らえられ石となってしまった。また、時が経てば日本を大きく傾けようとする大きな怨念が今、解脱(成仏)する事のうれしさよ」
と言って、少女は煙りのように消えた。と言うお話です。

金毛九尾の狐は白面の者と同じく、世界の始まりと共に、陰のエネルギーから生まれたものだったのです!

また、白面の者は九尾の狐と同じく、インド、中国、日本と各国を荒らしまくります。

ですので、獣の槍は中国で。とらの正体であるシャガクシャはインドでと、これまで九尾にゆかりのある国が登場します。潮は日本ですしね!

そして、そして、ここで注目したいのは「とら」であります!

実は、今回お話した華陽夫人の夫である斑足太子ととらには、ある共通点があるのです!



とらのモデルは班足太子だった?!とらとの共通点とは?

藤田和日朗/うしおととら 完全版18巻/小学館

実は、班足太子の出生にはある秘密があったのです。

マガダ国の王である屯天沙朗(じゅんてんしゃら)は、ある日、群臣を連れて山へわけ入った時、一匹のトラに出会った。家臣たちは逃げ出し、一人残った王はトラと仮の契約を結び、トラは妊娠した。

そして、産まれてきた子の足には斑点があったことから、「班足太子」と名付けたのです。

そう、班足太子の母はトラであり、太子はなんとトラとのハーフだったと言うことなのです。

そして、この話には続きがあり、成長した太子は父の後を継いで班足王となったが、王は人肉が好物でそれを得るために残虐非道を繰り返していたために、反発した他の国々の王たちによって山へ追放されてしまった。しかし、山の鬼たちは王を歓迎して大王として崇め奉った。

そして、前より力を増してしまった班足王は、鬼を引き連れて自分を山へ追いやった王達のところへ復讐に向かい攻めました。

次々に捕らえられて行く諸国の王達、最後に残った須陀須王(サンスクリット語でヴァシシュタ・名前の意味は‘‘最も優れた”と言う意味のインドの有名な賢者)が、自ら班足王に会いに行き、「四無常の偈(げ)」と言う仏教の詩を説いて聞かせた。

ヴァシシュタ

その詩を聞いた王は長い夢から覚め、捕らえた王達は無事に解放された。と言うお話です。ちなみに、斑足太子はその後出家したとのこと。

班足太子は、華陽夫人と出会わなくても悪いことやってたって事じゃないの?!って話ですが、これがもう一つの太子の伝説になっています。どちらにしろ、悪いことをやっていたのは変わりないみたいです。

人肉を食べたり・・・。そりゃ、トラとのハーフなので当たり前かな?とは思いますが、「うしおととら」のとらもハンバーガーが好物になる前は人肉が好物でしたよね!最初は潮のことも食べようとしていたぐらいですからね(笑)

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そして、なんと言っても「とら」ですよね!とらは、元の名前は「長飛丸」と言って、「とら」と言う名はとらが「虎」に似ていたことから、潮が付けた名前です。

また、潮と出会う前のとらは残忍で狂暴な性格をしていて、みんなから恐れられている妖怪でした。

まるで、改心する前の班足王のようです。ま、とらは潮と出会った後でも狂暴さはあんまり変わりませんが(笑)

とらと班足太子の共通点はインドと言う場所にもありますよね!とらは元はインドで産まれた「シャガクシャ」と言う人間でした。人間から妖怪へと変わってしまったんですね。基はと言うと、白面の者が原因なんですが。。

インドで人間から「虎」っぽい、人肉が大好物な妖怪へと変わってしまったとら。

もしかしたら、とらのモデルは「班足太子」なのかもしれません!共通点多すぎですもんね!



インドの華陽夫人

歌川国芳/三国妖狐図会

中国で妲己として悪さをしていた九尾の狐が、今度は目を付けたのはインドの班足太子でした。

妲己であった頃から、約700年後のことなのでそれまで機会を伺っていたのでしょうか?!そうなると、女の執念深さには目を見張るものがありますね!九尾は「女」であるかは分かりませんが、「うしおととら」の白面の者は陰陽の「陰の気」から生まれたとありますので、「陰」とは女性エネルギーを持ちます。

このことから、九尾の狐の執念深さも「女性エネルギー」から来ていると想像出来ます。

そして、陰の女性エネルギーと言えば、陽の男性エネルギーとなります。

これは、陰陽の法則で、陰と陽は一体であり、背中合わせです。

ですので、陰の白面は陽の気にばかり攻撃しています。そこで、陽の気である男性エネルギーを持った「とら」とは長い間のライバルであります。

そして、最終的には一つになって消えて行くと言う終わり方は、実は量子力学の法則に当てはまるんですね!作者の藤田先生凄い!って思いましたが、これはまた別の機会に詳しくお話したいと思います。

このように、漫画作品「うしおととら」白面の者を通して、九尾の狐の正体が見えてきたり、とらと班足太子との共通点も見えてきましたね!

さて、耆婆に正体を見破られてどこかへ逃げた九尾の狐ですが、今度はまた中国に舞い戻ります。

中国に戻った彼女はまたまたどんな悪事をするのか?!物語が進むにつれて九尾の狐の実態が少しずつ暴かれて行きますが、お次はどんなことが分かるのでしょうか?

九尾の狐が「白面金毛九尾の狐」と呼ばれていた秘密もインドでの伝説から分かりましたからね。

では、次回は中国に帰ってきた白面金毛九尾の狐の物語をお送りしま~す。